2013年5月15日

恐怖”をテーマに紡ぎ出されるダークでサイケデリックなグルーヴの嵐:ザ・フレーミング・リップス4年ぶりの最新作『ザ・テラー』

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ザ・フレーミング・リップス『ザ・テラー』
◎いまもたいして好きでもないストーン・ローゼズのファーストを完全コピーするアルバムを作っているやら、次作はKe$haとの共作と発表したりと、常に何かやってる感の強いフレーミング・リップス。去年もさまざまな人とコラボした『ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち(The Flaming Lips And Heady Fwends)』を出してたし、そういえばピンク・フロイド(Pink Floyd)の『狂気(Dark Side Of The Moon)』を再現したごきげんなアルバム(下段写真)なんてのもあったが、これ『ザ・テラー』(右写真)は本筋のデイヴ・フリッドマン(Dave Fridmann)とがっつりと組んだ新作スタジオ盤。

『エンブリオニック(Embryonic)』(下段写真)から4年ぶりとなるが、そんな小さな(?)時軸からは完全に解放された空気が流れるのは相変わらずで、通算13枚目のアルバムとなってもぶっ飛んだスタンスは少しも変わることはない。サイケデリックという言葉すら、ウェイン・コイン以下のメンバーたちは超越してしまっているようだが、さらに“恐怖”と題された今作は徹底的にダークな色合いを持っている。ウェインは今回のテーマは“世の中に対して絶望的な気持ちでいる”ことがベースになっているという。確かに、冒頭からその言葉を裏付けるような曲が繰り広げられるが、混沌とした曲調、演奏はこのグループの代名詞のようなものであり、そこにダークというスパイスを大量投入して練り上げられていく。

長大なセッションからベストなグルーヴのものをミックスさせていった前作の手法を踏襲しつつ、さらに洗練させることで“すごみ”を増大している。曲間をなくしてつながっていくのでアルバムの体裁をとった1曲とも言えるだろうし、コンセプト・アルバムととらえることも可能だ。ビーチ・ボーイズにまで通じる「Butterfly, How Long It Takes To Die」のような美メロディの曲もいいが圧巻は4曲目の「You Lust」で、13分ほどある曲がいくつかのパートに分かれ、それぞれが別宇宙を形成しつつ反応し合い、それがシームレスに次のタイトル・トラックにつながっていくあたりの美しいスリルは癖になって危険。

60年代後半のクロウト・ロックやサイケ、プログレッシヴに通じる手触りなのは間違いないが、音そのものが形になるまでの情報量がケタ違いなので大音量で聴き進めていくのにある種の恐怖すら感じる。その意味でも間違いなく傑作と断言できる。[大鷹俊一/SD163]

CD:『Doing The Dark Side of The Moon』2009年/『Embryonic』2009年

Offical: http://www.flaminglips.com/