2013年5月16日

コンセプチュアルなテーマと向き合い引き締まった演唱を聴かせる期待にたがわぬ力作:リチャード・トンプソンが2年ぶりの新作『エレクトリック』をリリースした

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リチャード・トンプソン『エレクトリック』
◎アルバム、ライヴともに外れナシ、内容絶対保証付きリチャード・トンプソン(Richard Thompson)の2年ぶりの新作だけに聴く前から確信はあったわけだが、そんな思いすら軽く凌駕する充実ぶりだ。活動歴40年以上にしてこのテンション、前向きな姿勢に対しては毎度ながら感激させられると同時に、そのあまりに報いの少なさに(とくに日本では!)申し訳ないような気分になる。

つねにアーティストとして意欲的なテーマを明確にする彼だが、今回は常にも増してコンセプチュアルだ。まず基本、トリオ編成で録る、そしてバディ・ミラー(Buddy Miller)というプロデューサーと真っ正面から組み合うということだ。前作『ドリーム・アティック(Dream Attic)』がライヴ・レコーディングでサックスやヴァイオリンも入っていたが、今作はさらに音数を減らし、曲/演奏の密度を高めている。前作でも入っていた信頼感の厚いマイケル・ジェローム(Michael Jerome/ドラムス)やタラス・プロドヌーク(Taras Prodaniuk/ベース)も堅実なプレイぶりで、リチャードの意図を的確に音化していく。『エレクトリック(Electric)』(右上写真)なんてタイトルからするとギンギンに弾きまくったり、ハードなサウンドを連想されるかもしれないが、いつもの“リチャトン・ワールド”がややロック強まった程度で全身が暖まる世界に変わりはない。スタジオ・ライヴ感が強いナンバーで響き渡る鋭角なギター・ソロには、彼のここで求めた音が明確になっている。

そしてもう一つのテーマであるバディ・ミラーとの相性もとてもいい。メンフィスにあるバディのスタジオでの録音という彼の土俵に上がってのものだが、まるで何十年も活動を共にしてきたかのような空気感が立ち上がってくる。エミルー・ハリスのバック・バンド、スパイボーイとしてキャリアを積み、ソロ作や妻ジュリーとの共作、さらにロバート・プラントやスティーヴ・アール等とやってきているバディの持つ新旧カントリーからルーツ・ロックまで満遍なく体感してきたセンスと、リチャード自身が積んできた経験を溶け合わすことで新鮮なものを産み出そうとした狙いは、みごとに成功している。名手のテクニックぶりを惜しみなく披露してくれるギター・ソロなども含め、求められるものの代表的な部分がきっちりと収められ、しかも前向きな意欲が胸を熱くする。7曲入りボーナスCD付き。[大鷹俊一/SD162]

 

Official: http://www.richardthompson-music.com/