2013年2月2日

ルーファス・ウェインライトが全曲ピアノ弾き語りのソロ・パフォーマンスで来日

Rufus Wainwright

◉ピアノ弾き語りによる究極のフォーマットで会場を魅了した前回2010年の来日からはや2年、ルーファス・ウェインライト(Rufus Wainwright)がソロ・パフォーマンスのためにやって来る。大絶賛された前回来日公演を見逃した方にとっては、感動的なステージになることに間違いない。

(右写真はCD:Rufus Wainwright『All Days Are Nights』)

 Rufus Wainwright

◎日程:3月18日(月)
◯会場:大阪・松下IMPホール
◯開場/開演:18:30 open/19:00 start 
◯料金: 8,500円(税込)[全席指定]
◯お問い合せ先:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506

◎日程:3月19日(火)
◯会場:東京・渋谷公会堂
◯開場/開演:18:30 open/19:00 start 
◯料金:S・8,500円 A・7,500円(税込)[全席指定]
◯お問い合せ先:ウドー音楽事務所 03-3402-5999

詳細は以下のURLのページにて
http://udo.jp/Artists/RufusWainwright/index.html

Rufus Wainwright Official Website:http://www.rufuswainwright.com/

◉ルーファス・ウェインライトを深く知りたい方のために、2010年10月に行なわれた前回来日公演を直前のインタヴュー記事をストレンジ・デイズ2010年11月号(132号)からピック・アップして掲載(原文のまま)しました。

 ◎ルーファス・ウェインライト・インタヴュー(2010年8月)
インタヴュー・文=池田聡子

 ルーファス・ウェインライトが、10月、08年の来日公演から約2年半ぶりに新作『オール・デイズ・アー・ナイツ:ソングス・フォー・ルル』を携え、再び日本公演を行なう。09年にはベルリンで上演されたロバート・ウィルソン演出のシェイクスピアの『ソネット』をベースにした舞台の音楽を手がけ、また自身初となるオペラ作品『Prima Donna』を上演するなど、幅広い活躍を見せた。一方で、昨年末には最愛の母、ケイト・マクギャリグルが他界するという悲しみにも見舞われている。そんな中、全編ピアノの弾き語りによる最新アルバムを仕上げ、再び来日を果たすルーファスに、最新作とそのステージについて、さらに多方面にわたる活動について聞いた。

 ――今回のステージは、ダグラス・ゴードンがヴィジュアルを手がけていますが、彼に依頼したきっかけと理由を教えてください。

「長年にわたって、僕はダグラスのファンだったからさ。彼の作品は極めてロックンロールで、ユルさがありながらも、非常に実験的であり、また若々しくフレッシュだ。同時に極めて抑制が効いていて、かつ古典的で、恐ろしく複雑な美意識があり、またフォーマルでもある。彼の作品には、破壊的な側面と構築的な側面が混在しているんだ。そこが大好きなんだ。そしてたまらなくエレガントでもある。そんな彼とコラボレートできたことにすごく興奮しているよ」

――今回のステージでは、前半はアルバム『オール・デイズ~』を全曲演奏し、その間、拍手などを禁じていますが、こうした構成にしたのはどのような理由からでしょうか?

「そもそもの始まりは、僕が熱烈なクラシック・ファンで、いわゆる“連作歌曲”形式の音楽表現が大好きだというところからなんだ。ドイツのリーダーやフランスのシャンソンにもその手の形式の作品が多いけど、僕は長年こういった作品を愛聴してきた。だから僕自身が連作歌曲から得てきた喜びを、ファンのみんなにも今回のライヴを通じて体験してほしいと思ったんだよ。その魅力を知らない人が実は多いんじゃないかなと思って……。そしてもうひとつの理由はというと……ほら、僕はライヴで何か失敗をした時に、いつもちょっと可愛らしく振る舞うところがあるだろう(笑)。間違いを犯しても、それがまるでちょっとしたジョークであるかのように、ごまかしてしまうんだよね。そんな自分の癖と向き合おうと思ったんだ。だから今回のツアーでは、これらの曲を威厳をもって、また自分に厳しい規律を課して披露しようと試みている。音楽的な技術に関しても、ピアノの演奏においても。自分の人間的魅力とかに頼って、ごまかさないようにしようってね。以上ふたつが主な理由だよ」

――ステージでこうした構成であるということは、『オール・デイズ~』は、コンセプト・アルバムということでしょうか?

「う~ん、どうだろう……もしも何かコンセプチュアルな面があるとしたらそれは……このアルバムは間違いなく、過去2年間の僕の人生の、誠実で包括的な断面図、と呼べると思う。そこにはたくさんのパーソナルな要素が含まれているし、同時に僕のキャリア面の歩みも網羅されていて、最近手がけた作品からの引用がある。つまり、オペラとシェイクスピアのソネットだね。さらには、母の病気のことや妹との関係にも触れているし、誰かが僕を真っ二つに切って、内部で何か起きているのかと覗き込んだような、まさにそういう感じなんだよ(笑)。だから全編をつなぐのは僕の存在ってことさ」

――アルバムは、お母さんのケイト・マクギャリグルさんの他界や妹のマーサさんの出産などからインスパイアされた個人的な思いを綴った楽曲が多く収録されています。こうした作品を作り上げてみて、客観的にこのアルバムはどのような作品だと感じますか?

「そうだね、これはツアーで繰り返しプレイしているうちに気づいたことだから、アルバムそのものというよりツアーを含めてのアルバム観ってことになるんだろうけど……というのも、ツアーでは1本のトータルな作品としてパフォーマンスを行なっているわけだし、ヴィジュアルなんかを伴ってステージで提示された時にこそ完成されるような気がするからね。とにかく僕が言いたいのは、今回のツアーではオーディエンスが拍手喝采することができないから、温度計というかバロメーターというか、その場の温度や空気感を測る手段がシャットダウンされているよね。だからこそ、それぞれに非常に大きなパワーを備えた要素によって、このアルバムが構成されているんだってことを確認できたんだ。それは僕のピアノ演奏であり、ヴォーカルであり、シェイクスピアの言葉であり……そして、それぞれが主役になり得るんだよね。ステージだとそれがより如実で、ある晩はピアノが主役で、ある晩は声が主役だったり……。曲を作るためのレシピに含まれたあらゆる要素が、際立っているアルバムなんだと思うよ」

――サード・アルバム『ウォント・ワン』あたりから、クラシックなどの要素を大胆に取り入れた非常にドラマティックで起伏のあるサウンド・メイキングが施されるようになったと思います。こうしたアプローチに移行していくきっかけなどはあったのでしょうか?

「究極的には僕がクラシック音楽とオペラが好きだという面が、どんどん前面に押し出されていったってことなんだと思う。だから必然的にこういう方向にシフトしていったんだ。何度も過去に言っていることだけど、オペラは僕の宗教なんだ。14歳の時にヴェルディの〈レクイエム〉を聴いた瞬間に改宗し、全くオペラの知識などなかったのに一夜にして過激なほどのファンになってしまった。そしてオペラは、辛い経験をした時にはいつも僕を慰め、手を差し伸べて支えてくれたんだ。従って、ここにきてオペラ作品を書き上げたことで、こうした神々が長年にわたって与えてくれた愛に、ようやくお返しができたんだ。それにオペラを通じて僕は、本当の意味で自分の感情を表現できた気がする(笑)。音楽的言語という意味においてね。そもそも心からオペラを愛していないとオペラを書くことはできないと思うし、自分の感情と思考と技術的能力のすべてを要求される。作り手の魂のすべてを捧げなければ、オペラは生まれない。だからオペラこそが、全開状態の自己表現って言えるんだよ」

――通常のポップ作品を書くことと、クラシカルなオペラ作品を書くことではその過程でどのような違いがありますか?

「オペラとポップは全く異なるプロセスを要する。そしてふたつの大きな違いは……オペラは100%音楽にかかわる表現だというところだ。そこが素晴らしいと思った。たとえば、プロモーションとか、そういった音楽とは関係ない部分を忘れて作業に没頭できるんだ。もちろん後々そういうことも考えなくちゃいけないんだけど、少なくとも作曲の作業をしている間は、音楽一色なんだ。だから外の世界を完全にシャットアウトして自分が作り上げようとしている作品に専念できるってことが、ポップ作品との最大の違いだね。その作業の濃密さに差がある。とはいえ、いったん足を踏み入れて内情を知るにつれて、僕がそれまでオペラの世界に対して抱いていたファンタジーや先入観の多くが、粉砕されていったけどね(笑)。オペラの世界って、とても清らかでクリエイティヴで魅惑的な……芸術の聖堂みたいなものだと僕は勝手に想像していたんだ。でも実際は、他のさまざまな世界と同じで、ネガティヴな面がいろいろあるんだよね。不確定な要素をたくさん抱えていて、純粋に音楽に根差した部分をクラシックの世界に探しても、ほとんど見当たらないよ」

――あなたの音楽には、お父さんやお母さんから受け継いだシンガー・ソングライターの影響はもちろん、クラシック、20~30年代のジャズ、50~60年代のキャバレーやミュージカルなどのショウビズ・ミュージック、60~70年代のビートルズをはじめとするポップ/ロック・ミュージックなど、さまざまな音楽からの影響がみられ、他のポップ/ロック・ミュージシャンとは一線を画す世界を築いています。自分自身ではどこからの影響がもっとも大きいと思いますか? また、あなた自身で、自分の音楽を言葉で表現するとどのようなものになるのでしょうか?

「究極的には僕はポップ・ミュージシャンであり、それが僕の職業さ。だから僕がやってるのはポップ・ミュージック。僕はメインストリーム・ポップ・アメリカン/カナディアン・ソングライターだ。それが基本。と同時に、さっきも言ったように僕の宗教はオペラであり、救済はオペラに求める。だから……うん、これらふたつが核なんだ。でも、おかしいことに、僕はフォークの世界にどっぷりと浸かって育っている。たくさんのフォーク音楽を聴いて育っていて、僕は間違いなく“フォーク・ベイビー”だった。それが、のちに“ポップ・ボーイ”へと成長したんだよ」

――アルバム『オール・デイズ・アー・ナイツ:ソングス・フォー・ルル』をリリースしてそれほど経っていませんが、次回作はいつ頃になるでしょうか?

「まだ具体的なことは言えないけど、とにかくポップ・アルバムを作る! ということだけは確かだよ。次は真っ当なポップ・アルバムを作りたい。それを本当に楽しみにしているんだ。なぜって、僕は踊りたい気分なんだよ!」