2014年1月21日

1983年にリリースされた、佐野元春初のベスト・アルバム『ノー・ダメージ』が、発売から30周年を記念したデラックス・エディションとなってリイシューされた!

◎1983年4月21日、佐野元春初のベスト・アルバム『ノー・ダメージ』が発売された。アルバムは前作『サムデイ』の勢いを上回るスピードでチャートを駆け上がり、ほどなくしてナンバー1の座についた。しかし、そのときすでに佐野元春はニューヨークに渡り、次回作のためのレコーディングの準備に追われていた。したがって、『ノー・ダメージ』がナンバーワン・ヒットとなったことを彼が知ったのは、ずっと後になってからのことだったらしい。そんないかにも佐野元春らしいエピソードを残すアルバムが、発売から30周年を記念したデラックス・エディションとなって2013年12月25日にリイシューされた。このデラックス・エディションは、3枚のディスクから構成されたボックス・セットで、ディスク1と2はオーディオの入ったCD、ディスク3は映像が収められたDVDとなっている。

ディスク1に収録されているのは、アルバム『ノー・ダメージ』の最新リマスター音源で、収録順も曲目もオリジナル・アナログ盤と同じだ。ちなみにこのアルバムには“14のありふれたチャイム達”というサブタイトルが付けられていて、アナログ盤では、サイドAが〈Boyʼs Life Side〉、サイドBが〈Girl’s Life Side〉となっていた。さらに、シングルやそれまでに発表したテイクをそのままコンパイルしているだけではなく、アルバムとしての統一感を出すために追加のレコーディングを行なったり、エディットしたりというこだわりを持たせている。今から30年前の日本で、ベスト盤のためにここまでするアーティストは稀だった。そうした点からも佐野元春の先進性と音楽に対する愛情の深さがわかる1枚でもある。

ディスク2は、オリジナルのアナログ盤発売時には存在しなかった音源で、“ロックンロール・ナイト・ツアー”の最終日にあたる1983年3月18日に東京の中野サンプラザで行なわれたステージを収録したもの。もちろん今回が初お目見えとなる音源だ。収録された楽曲数は本編と同じ14曲だが、内容は80年のデビューから『サムデイ』に至る3年間を俯瞰するような選曲となっていて、『ノー・ダメージ』のライヴ盤と考えるのもいいだろう。CDがかつてほどのセールスを上げることのなくなった今、多くのアーティストがライヴを重要な活動ととらえているが、佐野元春は当時からライヴを重要視し、ライヴに対する考え方は、他のアーティストと一線を画していた。彼の中にスタジオとライヴはまったく別のものという考えがあったからこそ、このようなアーカイヴ音源が登場することになる。ただし、彼が初期のライヴ音源を発表するのは珍しく、まとまった形での初期音源の発表は今回が初めての試みだ。まだ20代だった佐野元春が盟友ハートランドを率いて繰り広げるライヴの疾走感をそのままに真空パックした内容は、往年のファンだけではなく、かつての佐野元春を知らないファンにも充分に魅力的な1枚となっている。

ディスク3は映像が収録されたDVDディスク。収録されているのは幻の映画といわれている『フィルム・ノー・ダメージ』。この映像は1983年7月に劇場公開されて以降、フィルムが紛失してしまったため発表されることのなかった映像で、まさに幻の名を欲しいままにしてきた作品と言える。ディスク2のフィルム版と思っていただければわかりやすいだろう。“コンサート・ツアーの一番いい状態を残したい”という佐野元春と井出情児(撮影・監督)の共通の思いによって制作されたフィルムは、7台のカメラを持ち込んで撮影された。当時はまだアナログの時代で、フィルムのワンロールは10分程度しか回すことができなかったという。そうした条件の下、16ミリのムーヴィー・カメラを駆使してこの作品は制作されている。ミュージシャンのロード・ムーヴィー的な音楽映画は日本ではまだ珍しく、佐野元春の脳裏には、ビートルズの『レット・イット・ビー』、ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』、ジョージ・ハリソンの『コンサート・フォー・バングラディシュ』などの海外のロック映画の名作がよぎっていたはずだ。ジョンとヨーコの“ベッドイン”のパフォーマンスを模した映像や、高速道路を疾走する車の中から撮られた風景などがステージの模様にカットインするように挿入され、『フィルム・ノー・ダメージ』が一つの映像作品として成立するように制作されている。当時としてはまさに画期的な映像作品だった。今回のリイシューは、2011年に奇跡的に発見されたフィルムをデジタル・リマスターで甦らせ、クリアな画像で見ることができるのも大きな特徴の一つだろう。なお、この作品の発表を前に、『フィルム・ノー・ダメージ』は2013年9月7日より、全国で劇場公開(5. 1ch サラウンド・システム)されているのですでにご覧になったファンも多いと思われるが、見逃してしまったという方は是非このボックス・セットの映像を楽しんでほしい。

その『ノー・ダメージ』のスペシャル・エディションの発表と同時期に話題となったのが、アルバム『サムデイ』を完全再現する“名盤ライヴ”だ。このライヴは、名盤とされるアルバムを収録曲通りに完全に再現するというコンセプトで行なわれるもので、佐野元春の『サムデイ』がその第1弾。コンサートは13年11月16日の東京・ゼップ・ダイバー・シティと、24日の大阪・堂島リバーフォーラムで、2回ずつ、計4ステージが行なわれた。ご覧になった方も多いと思われるが、一枚の名盤を収録曲通りに完全再現するというライヴはこれまでになかったもので、佐野元春の『サムデイ』を皮切りに様々な名盤のライヴが登場するらしい。またこのライヴには、オーディエンスの一人一人に、当時のスタッフがアルバムの制作秘話を語ったオリジナルの映像作品が渡される嗜好もあり、ライヴ以外にも充分に楽しめる企画となった。[岩本晃市郎/SD172]

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