2014年1月24日

“ジョーン・ジェット(Joan Jett)”がスタジオ・アルバムとしては7年ぶりの最新アルバム『アンヴァーニッシュド』をリリースした!

◎実にシンプル、真に明晰、常に攻撃的。ロックンロールの基礎分子にやっぱり忠実でいてくれたことに嬉しさがこみ上げる作品だ。前作『シナー』から7年振りとなるジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ(Joan Jett & The Blackhearts)の新作『アンヴァーニッシュド(Unvarnished)』(※右上写真)がようやく届いた。冒頭の「エニー・ウェザー」を聴いただけでアルバムのスタンスがおおよそ見通せてしまう。フー・ファイターズ(Foo Fighters)のデイヴ・グロール(Dave Grohl)との共作になったこの楽曲は、ジョーンがヴォーカルとリズム・ギターを担当、それ以外の全てをデイヴが担当するという“豪華すぎるシンプル構成”。デイヴ・グロールが影響を受けた先人たちとコラボした『プロボット』という作品が思い起こされるが、あのアルバムにあった(死語だが敢えて)ノリノリな感覚に引っ張られながら、アルバム全体が気持ちよく疾走を始める。2009年のサマーソニックで来日を果たしていたもののしばらく音沙汰のなかった“姉御”から届いたのは、痛快・軽快・豪快、とにかく“快”なアルバムだった。

2011年には自らが制作総指揮をとったバンドの自伝的な映画『ザ・ランナウェイズ』が公開された。クリステン・スチュワート扮するジョーン・ジェット、そして『アイ・アム・サム』での可愛らしい子役時代が印象的だったダコタ・ファニングがシェリー・カーリーを演じた。“どんなに叩かれても、なりたい自分になってやる、絶対に”と叫ぶ女性ロッカーたちの肉迫した演技を後ろから焚き付けていたのはやっぱりジョーンだった。

ストレートなロックンロールに、現代の諸問題からインスパイアされた言葉を注ぎ込んでいくのもジョーンの特徴だ。ハリケーン・サンディで助け合う人々たちの姿に触発された楽曲、あるいはSNS時代の情報公開についての楽曲。社会と対峙する有効な手段としてロックを選んだ初期衝動をフル回転させる。この長いキャリアから考えてみればこのアクティヴさにはやはり尊敬の念。拳を上げてシンガロングしたくなる楽曲が粒ぞろい。後半にさしかかったあたりで用意される、低く重く沈んだリフワークからうねるように展開していく「リアリティ・メンタリティ」、本編最後、沈めるようにゆるやかに心地よく流れる「エブリバディ・ニーズ・ア・ヒーロー」など、曲のバリエーションも豊富。「ソウルメイト・トゥ・ストレンジャーズ」は、アゲインスト・ミー!(Against Me!)のヴォーカル、ローラ・ジェーン・グレイス(Laura Jane Grace)との共作。昨年、男性から女性へと性転換することを明らかにしたローラとの共演は意義深い。かねてから同性愛者への理解を示してきた彼女のような存在は、まさに道しるべとなってきたはずだから。日本盤のボーナス・トラックとして、デイヴとの共演曲の、ブラックハーツ演奏ヴァージョンなど5曲が収められている。代表曲「クリムゾン&クローヴァー」のライヴが収録されているのも嬉しい。

久々の新作に合わせて、旧譜4枚も紙ジャケ・高音質盤でリリース。豊富なボーナス・トラックが収録されることもあり急ぎ足ながら紹介していこう。79年にランナウェイズが解散して以降ソロとして活動を重ねてきたジョーンが、自身の名を掲げたデビュー作をリリースするのは81年、のちにボードウォーク・レコーズと契約した際にアルバム名を改めたのが『バッド・レピュテーション』(1)だ。とかく軽快な楽曲がスピーディーに走る、ランナウェイズの魂を見事に引き継いだ作品。今回追加収録されるのはシングル「メイク・ビリーヴ」のB面やヨーロッパ盤『ジョーン・ジェット』に収録されていた「ハンキー・ハンキー」など。ディー・ディー・ラモーン(Dee Dee Ramone)ら、ラモーンズ(Ramones)のメンバーと組んだライヴ音源によるタイトル曲が収められているのも嬉しい。タイトル曲が7週連続全米ナンバーワンを記録した『アイ・ラヴ・ロックン・ロール』(2)、何度聴いても、混じり気のないストレートなロックに打ちひしがれる傑作だ。5曲のボーナス・トラックは、シングルのみに収録された「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ユーヴ・ガット」の82年のスタジオ・ライヴ音源など。83年発表の『アルバム』(3)、大ヒット作の次作というプレッシャーをはね除けて2曲のトップ40をチャートに送り込んだサード。ローリング・ストーンズやスライ&ザ・ファミリー・ストーンの楽曲を自分流に調理したカヴァー・ソングが印象的だ。ボーナス収録はシングル「フェイク・フレンズ」のB面曲など6曲。84年発表『誘惑のブラックハート』(4)。ランナウェイズ時代の名曲「チェリー・ボム」からスタートする良作。レコード会社のフォローを得られずに思うほどの結果を得られなかったが、当然ながら軸足はぶれていない。今回はプロモ盤に収録されていた楽曲など実に7曲ものボーナス・トラックが収録されている。

名作と呼ばれることの多い初期4枚は、30年もの時空を飛び越えて、新作のアイデンティティと素直にリンクする。女であることをマーケット上の利益に活かすのではなく、メンタルの基軸に置いたこのロックンローラーの軌跡は、最新作に集約されていると断言していい。少しでも過剰と思われる贅肉はとことん削ぎ落として、タイトなロックをがむしゃらに興じるジョーンのロックンロールは時代を悠々と貫通する。そして、いつの時代であろうとも、その潔さからは誇らしさが香り立つ。新作にケツを蹴り上げられつつ、久々の来日を待ちたい。[武田砂鉄/SD171]

Joan Jett and the Blackhearts – Any Weather (Official Music Video)

 

(1)『Bad Reputation』VICP-75122 (org.1981)
(2)『I Love Rock’n’Roll』VICP-75123 (org.1981)
(3)『Album』VICP-75124 (org.1983)
(4)『Glorius Results Of A Misspent Youth(誘惑のブラックハート)』VICP-75125 (org.1984)
*いずれもK2HD+HQCD, 紙ジャケ仕様にて、ビクターより2013年12月18日発売

Official: http://www.joanjett.com/