2014年8月12日

トランスアトランティック(Transatlantic)のライヴ4作品が紙ジャケット、HQCDにてリイシューされた!

◎プログレッシヴ・ロックというジャンルにおけるライヴ・パフォーマンスのクオリティの高さは、他の音楽ジャンルよりも重要な意味を持つのではないだろうか。レコードとコンサートの内容が違うのが当たり前だった60年代から、レコードの内容にライヴならではの熱気/インプロヴィゼーション/視覚効果や演出といったサムシングを加えたステージングが一般化した70年代において、スタジオ録音の再現にとどまらない“レコードを超えたパフォーマンス”でなければ、一流バンドとは見なされなかったプログレッシヴ・ロックの世界。90年代を経てデジタル機材が一般化し、アナログ時代と比較すると遥かにコンパクトかつ安価でライヴ・レコーディングが可能となった現在において、もはやライヴ盤は契約消化の枚数合わせや単なるメモリアル・アイテムではなく、バンド本来の姿をアピールする重要な作品となった。4枚のスタジオ・アルバムを発表しているトランスアトランティック(Transatlantic)が、同じく4枚のライヴ・アルバムをもリリースしているのは、バンド側のステージ・パフォーマンスに対する高い自信に加え、ファンが彼らのライヴ・アルバムに大きな期待感を抱いていることの表れだろう。

当時ドリーム・シアター(Dream Theater)に在籍していたマイク・ポートノイ(Mike Portnoy/Ds)が抱いたスーパー・バンド構想に端を発し、同じくスポックス・ビアード(Spock’s Beard)に在籍していたニール・モーズ(Neal Morse/Vo、K)、北欧シンフォニックの雄ザ・フラワー・キングス(The Flower Kings)のロイネ・ストルト(Roine Stolt/G)、そしてマリリオン(Marillion)のピート・トレワヴァス(Pete Trewavas/B)からなる、まさに大西洋をまたいだ米英北欧混合のスーパー・グループ、トランスアトランティックが結成されたのは1998年のこと。デビュー作『SMPT:e』が好評を得た彼らは、2000年6月にアメリカ東海岸をサーキットするツアーを行ない、ワシントンDC公演を収録した『ライヴ・イン・アメリカ(Live In America)』(※下段写真)を01年にリリースした。デビュー・アルバム収録曲の大半にカヴァー曲を加えたステージは、彼らが現代プログレッシヴ・ロック界の大物が集った一時的な特別ユニットではなく、一発勝負のライヴ・パフォーマンスもOKなバンドであることを証明し、スタジオ・アルバムに劣らない評価を獲得する。本作の聴きどころは、スタジオ・ヴァージョンを凌ぐ荒々しいグルーヴで再現されたトランスアトランティックのオリジナル・ナンバーよりも、彼らのルーツを濃厚に反映したカヴァー楽曲の数々にあるといっていいだろう。ビートルズ(The Beatles)の「マジカル・ミステリー・ツアー」から「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」へとなだれ込む展開や、ジェネシス(Genesis)「ファース・オブ・フィフス」の完全コピーは、彼らの先人に対する多大なリスペクトが感じられる充実したパフォーマンスとなっているからだ。

2枚目のスタジオ作『ブリッジ・アクロス・フォーエヴァー(Bridge Across Forever)』の発表後、サポート・メンバーにダニエル・ギルデンロウ(Daniel Gildenlöw/G、K)を迎えて行なったヨーロッパ・ツアーより、01年11月オランダ公演を収録した『ライヴ・イン・ヨーロッパ(Live In Europe)』(※右上写真)は、より一体感を増したコンビネーションで長尺ナンバーを再現する姿が印象に残るが、本作でも耳を引くのはカヴァー曲である。ツアー・バスの中でビートルズを合唱していたことを反映したのか、今回は『アビイ・ロード』B面メドレーが「ハー・マジェスティ」まで完全再現されているのだ。トランスアトランティックが、本来の意味での“バンド”になったことを象徴する演奏の一体感をオーディエンスが楽しんでいる様子が伝わってくるライヴ・アルバムといえるだろう。

ニール・モーズのスポックス・ビアード脱退に伴う活動休止期間を経て、09年に77分1曲からなるアルバム『旋風(The Whirlwind)』で復活を遂げたトランスアトランティックは、翌年4月の北米を皮切りに5月22日英国マンチェスターまでアメリカ~ヨーロッパを回る全22公演のツアーを敢行、『旋風』を完全再現した大曲中心のステージは各地で賞賛を浴びた。『ワールド・ツアー2010(Whirld Tour 2010)』(※下段写真)は、5月21日ロンドン公演での3時間に及ぶフル・ステージをCD3枚に収録した作品。完璧主義者の彼らがパーフェクトと自賛するパフォーマンスを収録した本作は、リリース当時は2枚のDVDを同梱したデラックス版も存在したが、今回はCDパートのみとなる。『ワールド・ツアー2010』から1日後のツアー最終日マンチェンスター公演をCD3枚に、20日オランダ公演を2枚のDVDに収めた5枚組『モア・ネヴァー・イズ・イナフ〜ライヴ(More Never Is Enough: Live In Manchester & Tilburg 2010)』(※下段写真)をリリースしたのは、彼らの同ツアーにおけるパフォーマンスに対する自信の表れだろう。日によってグルーヴ感が異なる演奏は、セットリストが変わらなくても飽きることがない。DVDパートのオランダ・ティルブルク公演における、10分間のアンコールを経てバンドがジェネシスのカヴァー「リターン・オブ・ザ・ジャイアント・ホッグウィード」のライヴ初披露は、ちょっと声が荒れ気味のモーズを応援するべく観客大合唱となるシーンが感動を呼ぶ。そう、トランスアトランティックの本質は、完璧にコントロールされたスタジオ・アルバムではなく、予測不可能な出来事がスリルを呼ぶライヴ・パフォーマンスにあったのだ。彼らの初来日公演が実現することを願いつつ、今回リリースの作品群を堪能したい。[鬼形 智/SD178]

TRANSATLANTIC – We All Need Some Light (OFFICIAL VIDEO)
Taken from the album “Live In Europe”. Inside Out Music 2003

『Live In America』IECP-20238~9/『Whirld Tour 2010』IECP10288~90/
『More Never Is Enough: Live In Manchester & Tilburg 2010』IEZP-73
*いずれもWHDより6月25日発売

Official Website:
http://www.transatlanticweb.com/