2013年2月21日

イタリアン・シンフォニック・ロック・シーンを牽引する、ラ・マスケラ・ディ・チェッラの『続フェローナとソローナの伝説:明日への扉』が発売される

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ラ・マスケラ・ディ・チェッラ『続フェローナとソローナの伝説:明日への扉』
LA MASCHERA DI CERA『Le Porte Del Domani』

◎世にトリビュート盤は多いが、プログレッシヴ・ロックの場合、それがアルバム1枚丸ごとカヴァーという方法をとることも多い。アルバム1枚で丸ごとストーリー仕立て、というプログレッシヴ・ロックのコンセプチュアルな特質が、こういう作品を生み出すのだろう。複数のアーティストでひと組のアーティストをカヴァーした作品もあれば、ひと組のアーティストで別のひと組のアーティストをカヴァーした作品もある。ベテラン・アーティストが過去の自作を丸ごとカヴァーするのはトリビュートだろうか。その場合、自作をカヴァーするよりも続編を制作する可能性の方が高そうだ。近年の例でいえば、ジェスロ・タル『ジェラルドの汚れなき世界』に対するイアン・アンダーソンの『同2』がそれに当たる。

だが、ここに、そのどれとも違う作品が登場した。イタリアン・ロックのレ・オルメ(Le Orme)が1973年に発表した『フェローナとソローナの伝説(Felona E Sorona)』に対する続編と位置づけられた『続フェローナとソローナの伝説(Le Porte Del Domani)』である。どれとも違う? そう、録音したのは当のレ・オルメではなく、現在のイタリアン・シンフォニック・ロック・シーンを牽引するファビオ・ツファンティ(Fabio Zuffanti)の率いるラ・マスケラ・ディ・チェッラ(La Maschera Di Cera)なのだ。

オリジナルの『フェローナとソローナの伝説』は、2人の登場人物を対比的に描くことでユートピアと反ユートピアを象徴する、架空の惑星を舞台にした物語仕立てのアルバムである。国際市場への足掛かりとして同作はオリジナルのイタリアン・ヴァージョンのほか、ピーター・ハミルの協力のもと英詞ヴァージョンも制作されているが、ツファンティ等はその点まで踏まえて続編をイタリア語と英語の両ヴァージョンで発表するという念の入れよう。さらに、カヴァーのアートワークを制作したのも同じデザイナー。

ここまで徹底して、音がオリジナルとかけ離れていたらガッカリだが、9つのパートから成る組曲(これもオリジナルを踏襲)は、演奏上の技巧やアナログの風合を出したシンセサイザーの音色に至るまで、非常にきめ細かく分析研究したあとがうかがえる。アレッサンドロ・コルヴァッリャのリード・ヴォーカルはオリジナルより荒削りかなとも思ったが、一音一音の押し出しの強さをプログレのモダン化に沿った変化と捉えれば、ヴォーカルもまた例外ではないのだろう。

オリジナルが名盤であるほど続編の是非は割れるにちがいない。余韻を打ち消したくないという思いが働く場合もあろう。ならば、レ・オルメのことなど何も知らない若者に、ロックにもいろいろあるんだよ、という意味でこのアルバムをおすすめする。日本盤は特別音源を加えた3枚組ボックス・セット(右上写真)での販売も。[松井 巧/SD161]

左からオリジナル・ヴァージョン/イングリッシュ・ヴァージョン