2014年12月9日

“PFM”70年代のBBC音源集『ペイパー・チャームズ:ザ・コンプリートBBCレコーディングス1974-1976』!

◎70年代に英国・米国のみならず日本公演も実現させ、活動再開後の00年代においても精力的に世界中をツアーしているため忘れてしまいがちなのは、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(PFM)はイタリアのロック・バンドであるという視点だ。比較的に自国言語以外の音楽でもチャート上位に昇ってくる日本とは異なり、英語圏以外の音楽に厳しいイギリスとアメリカにおいて、英語歌詞ヴァージョンをリリースしたにせよチャート・インを果たし、数千人クラスの会場を埋めるコンサートを実施できたイタリアン・プログレッシヴ・ロック・バンドは、PFMだけだったのだ。今回リリースとなるのは、PFMがキャリアの中で最も精力的に海外攻略に挑んでいた1974年から76年のライヴをまとめたもので、古くからブートレッグやコンピレーション盤の収録などでマニアには知られていたBBC音源集である。一挙にCD2枚のコンプリート版としてリリースされるだけでなく、貴重な映像を収録したDVDまで付属する完全無欠なアーカイヴ・ボックスとして発表されるのは、この上もない喜びといえるだろう。

各ディスクの紹介の前に、当時のPFMの状況を整理しておこう。72年にEL&Pのイタリア・ツアーで前座を務めてグレッグ・レイクの目に留まったPFMは、イタリアにおけるセカンド・アルバムを基調としてキング・クリムゾンのピート・シンフィールドによるプロデュース&英語歌詞によって世界進出盤『幻の映像(Photos Of Ghosts)』を73年にリリース、翌年には世界進出第2弾『甦る世界(The World Became The World)』のリリース後に英米を含むワールド・ツアーを敢行し、そこからニューヨーク&トロント公演の模様を収録したライヴ・アルバム『クック』もリリースされた。75年には弟分的バンドだったアクア・フラジーレ(Acqua Fragile)から専任ヴォーカリストとしてベルナルド・ランゼッティ(Bernardo Lanzetti)を迎え、アメリカ在住経験がありネイティヴに近い英語の発音が出来るランゼッティ加入によって、さらなる世界制覇に向けて本格的な活動を行なっていた時期である。すなわち、本作に収録の74年~76年は長いPFMの歴史の中でも全盛期といえる時代だった。

ディスク1はBBCラジオ1〈イン・コンサート〉としてBBCのパリス・シアターにて75年5月に収録されたライヴ音源で、メンバーはフランコ・ムッシーダ(Franco Mussida/G)、フラヴィオ・プレモーリ(Flavio Premoli/K)、マウロ・パガーニ(Mauro Pagani/Vln、Fl)、パトリック・ジヴァス(Patrick Djivas/B)、フランツ・ディ・チョッチョ(Franz Di Cioccio/Ds)の5人編成。破格の成功を収めた初の北米ツアーの模様を収録し、ライヴ・バンドとしてのPFMの魅力を全世界に知らしめたライヴ盤『クック』リリース後ということもあって、楽曲のセレクトや演奏スタイルはほぼ同じものとなっている。ライヴ・サーキットで演奏もこなれたのだろうか、各楽曲ともにスタジオ盤よりもテンポが加速され、さらにはライヴならではのインプロヴィゼーションが随所に組み込まれたステージングは、全盛期を迎えたバンドならではのオーラが漂っている。ライヴ収録を意識するあまり小さくまとまったプレイに終始する音源も少なくない〈BBC・イン・コンサート〉であるが、PFMにそんな心配は無用だった。むしろイギリス人にイタリアならではの熱いパッションと豪快なテクニックを見せつけてやろうといった心意気すら伝わってくる内容だ。大幅に即興パートを伸ばした「ハンスの馬車」は、ライヴ盤『クック』のCD3枚組拡張版にも収録されなかったので、本ヴァージョンは貴重。

ベルナルド・ランゼッティを迎えた新生PFMとしての第1弾アルバム『チョコレート・キングス』リリースの10日前である76年4月15日、再びパリス・シアターに立ったPFMのステージを収録したのがディスク2である。『チョコレート・キングス』から3曲で、残りは前年のセットリストと被るものの、当然のことながらメンバー編成が違うし、さらには既存の楽曲に新たな解釈、たとえば当時のシーンのトレンドとなりつつあったクロスオーヴァー感覚などが取り入れられており、同じ曲といえども演奏は別物となっているのが面白い。全体的に大味になる一歩手前でとどまったかのような荒さと突込み気味なリズム・セクションが印象に残り、会場に居合わせたイギリス人は炸裂するイタリアン魂に唖然としていたに違いない。ディスク1&ディスク2ともにプロフェッショナルなレコーディングの音源であり、テープ管理もしっかりしていたようで音質的にはまったく問題なし。極少量が流出したBBCトランスプリクション・ディスクを手に入れた一握りの幸運なファンしか楽しめなかった奇跡の音源が手軽に入手できるようになったのは快挙である。

〈イン・コンサート〉音源だけでも素晴らしいのに、本ボックスにはPFMがイギリスの人気音楽番組〈オールド・グレイ・ホイッスル・テスト〉に出演した3回分の映像を収録したDVDも付属する。所属レーベルのマンティコアがプロモーション用に制作したスタジオ・ライヴや、TV番組用に別撮りされた短縮ヴァージョンなどソースはさまざまであるが、どれも良好な画質でメンバー若き日の姿を余すことなく捉えている。この時期のパガーニとプレーモリは実にイケメンで、彼らのルックスの良さも世界進出成功の鍵となったのでは? と思えるぐらいに楽しい映像集だ。[鬼形 智/SD182]

Official Website:
http://www.pfmpfm.it/
http://www.cherryred.co.uk/shopexd.asp?id=4812