2015年4月1日

祝来日記念盤!:フラワー・キングス(The Flower Kings)関連初期4作品がSHM-CD、紙ジャケットで再発! 

◎北欧のみならず、21世紀のプログレッシヴ・ロックを語る際に絶対に外すことができないスウェーデンのスーパー・ギタリスト、ロイネ・ストルト(Roine Stolt)。現在では“フラワー・キングス(The Flower Kings)やトランスアトランティック(Transatlantic)のギタリスト”で知られる彼だが、一昔前は“スウェーデンの伝説的バンド、カイパ(Kaipa)の~”という説明が一般的だったことを記憶しているファンは、どれぐらいるだろうか。プログレッシヴ・ロック名盤CD化再発が進んだ90年代初頭においても、カイパの諸作品は未CD化で幻の名盤扱いという状態が続いたなんて、今となっては信じられないことかもしれない。しばらくプログレッシヴ・ロックのフィールドから離れていたロイネ・ストルトがシーンに復帰したのは、ようやくカイパのCD化が実現し、叙情性とテクニックを兼ね備えたストルトのギター・プレイが広く認識された90年代中盤のことだった。いわば、日本のリスナーにとってロイネ・ストルトは“遅れてきた名ギタリスト”だったのである。とはいえ、彼がシーンに復帰した1994年は、往年の名バンド復活と共に新世代のミュージシャンたちがストレートにプログレッシヴ・ロックを志向した作品を発表し始めた時期だったので、結果的に時代の波に流されず数多くのリスナーに受け入れられたことは幸運だった。

ロイネ・ストルトが彼のソロ名義で94年にリリースしたアルバム『ザ・フラワー・キング(The Flower King)』①は、まさに“すべてはここから始まった”というべきプログレッシヴ・ロック史の記念碑的な作品である。7分から10分台の中曲に短めのバラードを挟み後半は20分の大曲で締めるという構成、ハモンド・オルガンとシンセサイザーとメロトロンが舞う中をギターが泣きのフレーズを奏でるサウンド、変拍子を繰り出すリズム・セクションに乗って歌われるヒネリの効いたメロディ・ライン、それらすべてが何の迷いも衒いもない開放的なシンフォニック・アレンジで展開されていく。リリース当時に本作を聴いたとき“本当にプログレは復活した”と純粋に思った。80年代だったら過去の焼き直しだの進歩がないだのといったネガティヴな評価を受ける危険性も孕んだ本作が、“すべての表現手法は出尽くした。現在の我々に残された手段は過去のサンプリング/コラージュだけである”という認識がロック界で一般化し始めた94年にリリースされた意義は大きい。

ソロ作が成功を収めたストルトは参加メンバーを中心としてザ・フラワー・キングスというバンドを結成し、95年にバンド名義の第1弾『バック・イン・ザ・ワールド・オブ・アドヴェンチャーズ(Back In The World Of Adventures)』②をリリースした。ハイメ・サラサール(Ds)とハッセ・ブリュニュッソン(Per)が繰り出すクロス・リズムにロイネの弟マイケル・ストルトのベースが呼応し、トマス・ボディーンの色彩感あふれるキーボードとロイネのギターが駆け抜けるサウンドは素晴らしかった前作を軽く超えており、アルバム・タイトルのごとくロイネ・ストルト=フラワー・キングが冒険の世界=シンフォニック・ロック・シーンに返り咲いたことを高らかに宣言するものとなった。曲によっては北欧ならではのダークな感覚とメランコリーが顔を出す場面もあるのだが、本作に一貫しているのはジャケット・アートのような祝祭ムードである。アルバム全体に漂うポジティヴな明るさと突き抜ける爽快感は、プログレ=暗く後ろ向きというマイナス・イメージを打ち消して、新たなリスナー獲得に成功した。

前作から僅か半年後という異例のスピードで次作の制作に突入というエピソードは、ストルトの創造力が猛スピードで拡大していったことを物語っている。ということで、バンド名義での2作目『レトロポリス(Retropolis)』③が傑作となったのは当然の成り行きだった……と書いてしまったら話は終わってしまうのだが、実際に“シンフォニック・ロック王者の風格”という言葉が誇張ではないぐらい完成度の高い世界が展開されているのは事実だ。時間と空間を超えた愛と平和の都市レトロポリスを舞台に繰り広げられる物語をテーマとした本作は、ピンポンのラリーを模したサウンド・エフェクトがガラスの割れる音に変化する衝撃的なオープニングから慈愛にあふれたバラードのエンディングまで、シンフォニック・ロックの魅力であるドラマ性を体現している。ドラマ=ストーリーに重要な歌詞&歌声が、専任ヴォーカリストのハッセ・フレベリの加入で拡大したのも大きい。

ストルトの創造力はCD1枚の許容量を超え、フラワー・キングスの3作目『スターダスト・ウィ・アー(Stardust We Are)』④はCD2枚組の超大作となる。軽快なシャッフル・ビートのオープニング~シンフォニック・バラード~変拍子大会インストという従来路線だけでなく、フォーク/トラッド志向のアコースティック・ナンバーやレゲエ、さらにはタブラとシタールをフィーチャーしたエキゾチックなインストまで、各メンバーの持つ音楽性が最大限まで詰め込まれた密度の高いアルバムだ。ディスク2の冒頭から何度も現れるフレーズが、実はラストを飾る25分大曲のテーマだったことに気づく頃には、リスナーの心は達成感と心地よい疲労感に満ちた悟りの境地でまどろんでいるだろう。作品すべてが〈ヨーロピアン・ロック・フェスVol.2〉での来日を記念した紙ジャケット+リマスター+SHM‒CDのリリースとなるのが嬉しい。[鬼形 智/SD186]

※同時発売CD: The Flower Kings ②『Back In The World Of Adventures』 BELLE-152364/
③『Retropolis』BELLE-152365/④『Stardust We Are』BELLE-152366~7

Official Website:
http://www.flowerkings.se/
Official facebook:
https://www.facebook.com/TheFlowerKings