2015年6月9日

フィル・マンザネラ(Phil Manzanera)の初期ソロ4作品とベストが紙ジャケット、SHM-CD仕様で再発!

◎ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)が“もうバンドとしての活動予定はない”と宣言したロキシー・ミュージック(Roxy Music)だが、元メンバーたちが今もなお精力的なソロ活動を続けていることは特筆に価する。意欲的な新作をリリースするだけでなくライヴ活動も続行中のブライアン・フェリー。アンダーワールド(Underworld)のカール・ハイド(Karl Hyde)とのコラボレーションが記憶に新しいブライアン・イーノ(Brian Eno)。UKファイナル公演を日本で行ない次のステップに期待がかかるエディ・ジョブソン(Eddie Jobson)。そしてピンク・フロイド(Pink Floyd)の新作リリースに力を貸し、デヴィッド・ギルモア(David Gilmour)の右腕として今年に予定されているツアーにも帯同するフィル・マンザネラ(Phil Manzanera)だ。ロキシーでは静かなるメンバーとしてあまり表舞台には出てこなかったマンザネラが、実はバンド在籍時代から積極的なソロ活動を繰り広げ、多彩なミュージシャンたちとコラボレーションを行なっていたことは、もっと語られてもいいだろう。このたび紙ジャケット+SHM-CD仕様で5作品が再発されることは、そんな彼のソロ活動を再認識するのに絶好の機会だ。

カンタベリー・シーンの伝説的なバンドだったクワイエット・サン(Quiet Sun)を経て1971年にロキシー・ミュージックに参加したマンザネラは、バンドと平行してソロ活動にも力を入れていったブライアン・フェリーに続く形で75年に初ソロ・アルバム『ダイアモンド・ヘッド(Diamond Head)』(※右上写真)をリリースした。本作が同時期のロキシーに並ぶほどの重要作となった理由の一つとして、多彩なゲスト・ミュージシャンの参加を挙げたい。オープニング・ナンバーでエキゾチックなスペイン語のヴォーカルを披露したロバート・ワイアット(Robert Wyatt)、まだロック・フィールドでの活動を行なっていたブライアン・イーノ、モダンな変拍子ファンク・ナンバーで唯一無二のヴォーカル&ベースを聴かせるジョン・ウエットン(John Wetton)、そして一時的に再結成を果たし本作のレコーディング空き時間を利用してアルバム『メインストリーム(Mainstream)』の制作を行なったクワイエット・サンのチャールズ・ヘイワード(Charles Hayward)。そんな豪華メンバーが大挙して参加したアルバムが傑作となるのは当然であり、本作によってマンザネラは“ロキシーの静かなるギタリスト”ではなく“幅広い交友関係から多彩な楽曲を生み出す一流のアーティスト”として認められることとなった。

デビュー作に参加したメンバーを中心として結成されたユニット、801で行なったステージを収録したライヴ盤『801ライヴ(801 Live)』(今回の再発には含まれていないが、説明不要の名作)を受けて制作されたマンザネラのセカンド・ソロ『リッスン・ナウ(Listen Now)』(※下段写真①)は、801の参加メンバーに加えて元10CCのゴドレイ&クレーム(Godley & Creme)やエディ・ジョブソンやメル・コリンズ(Mel Collins)といった豪華ゲスト・ミュージシャンがサポートに加わった関係で、フィル・マンザネラ/801(Phil Manzanera / 801)名義でリリースされた。新人サイモン・エインリー(Simon Ainley/※のちにニューウェイヴ系のランダム・ホールドに参加)のジェントルなヴォーカルを主体とした音作りは、カンタベリー・ジャズ・ロックからプログレッシヴなインスト・ナンバーまで収録した前作とは異なるモダーン・ポップ寄りの作風となり、本作ではギタリストとしての側面よりも優秀なポップ・メーカーとしてのマンザネラがフィーチャーされている。今回のリリースにあたって最新リマスタリングが施されるのと同時に曲順がCDフォーマットに合わせた並びに変更されており、当時はアナログ盤の収録のため成し得なかったアーティストが意図する構成となった決定版だ。

『リッスン・ナウ』とほぼ同じメンバーで制作されたソロ第3弾『K-スコープ(K-Scope)』(※下段写真②)は、ソロ1作目と2作目の良質な部分を抽出しジャズ・ロックからポップなヴォーカル・ナンバーまでマンザネラの持つ幅広い資質を反映したアルバムとなった。本作がリリースされた78年といえばプログレッシヴ・ロックが衰退してニューウェイヴが全盛期を迎える時期にあたるが、マンザネラがオールドウェイヴという名の下に忘れ去られなかった理由として、のちにアルバム・タイトル曲のリフがカニエ・ウエストのアルバムにサンプリングされたという事実を挙げておこう。

コンポーザーとしての資質を前面に押し出し、あえてプレイヤーとしての側面は抑え気味にしていたマンザネラが、ギタリストとしての資質を全開にして制作に臨んだのがソロ4作目『プリミティヴ・ギターズ(Primitive Guitars)』(※下段写真③)である。彼にとって初のギター・インストゥルメンタル・アルバムとなった本作は、ギター以外の楽器のほとんどを演奏してマルチ・プレイヤーぶりをアピールすると共に、彼のルーツであるラテン~キューバン・ミュージックの要素を大胆に取り入れた意欲作となる。エレクトロニクスを多用した音作りであるものの、決して冷徹なマシン・ミュージックにはならず、すべてのフレーズに静かなパッションがあふれ出す作風は、彼が新たな境地に達したことを物語っている。

まずはマンザネラのキャリアを押さえてからという向きには、同時リリースの2枚組ベスト『ザ・ミュージック1972~2008(The Music 1972-2008)』(※下段写真④)をお薦めしたい。ロキシー・ミュージック時代から2008年のソロ作『ファイアーバードV11(Firebird V11)』までの代表曲を収録したセレクションは、フィル・マンザネラの歩みを俯瞰するのに有用な究極のベスト・アルバムといえるだろう。[鬼形 智/SD188]

CD:①『Listen Now』VSCD-4299/②『K-Scope』VSCD-4300/③『Primitive Guitars』VSCD-4301/④『The Music 1972-2008』VSCD4296~7(※ヴィヴィド・サウンドより同時発売)

Official Website:
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Official facebook:
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