2015年8月23日

ジェネシスの音楽性の要、トニー・バンクス(Tony Banks)のソロ・キャリアを俯瞰する4CDボックス・セット!

トニー・バンクス『ア・コード・トゥ・ファー』
◎ジェネシス(Genesis)の音楽性の要であり続けたトニー・バンクス(Tony Banks)が、彼のソロ・アーティストとしてのキャリアを俯瞰するCD4枚組ボックス・セットをリリースした。まずは、アルバム・タイトル『ア・コード・トゥ・ファー(A Chord Too Far)』に込められた意味を推測してみよう。実はバンクスは相当な映画マニアであり、しばしばインタヴューにおいても映画のタイトルやセリフを引用した発言を行なっている。おそらく『A Chord Too Far』は、第二次世界大戦後期におけるマーケット・ガーデン作戦を描いた戦争映画『A Bridge Too Far(邦題:遠すぎた橋)』をもじったものであろう。後年にイギリス軍モントゴメリー元帥の最大の汚点と呼ばれるほど大失敗に終わった作戦を描いた映画をモチーフにしたタイトルを自身のキャリアの集大成となるボックス・セットに名付けたのは、燕尾服姿のピアニストがピアノを放り投げているジャケット・アートも含めて、バンクスのソロ・アーティストとしての活動が失敗だったというシニカルな暗喩に満ちているのだ。同僚のフィル・コリンズやマイク・ラザフォードの商業的成功には遠く及ばなかったソロ作品に対し、愛憎入り混じったスタンスで編集されたことが推測できる。

ディスク1がバンクスの映像音楽をまとめたアルバム『サウンドトラックス(Soundtracks)』収録曲から始まり、ソロ2作目『ザ・フュージティヴ(The Fugitive)』やニック・デイヴィス(Nick Davis)とのユニット『ストリクトリー・インク(Strictly Inc.)』やソロ3作目『スティル(Still)』からのナンバーが選ばれていることから、本ボックスはバンクスのキャリアを年代順に並べたのではなく、あるテーマに沿ってランダムに曲順が決定されたと推測される。初ソロ作品『ア・キュリアス・フィーリング(A Curious Feeling)』はジェネシスのアルバム『そして三人が残った(…And Then There Were Three…)』時期の作風を反映し、エレクトリック・ピアノとストリングス・シンセサイザーの壁で固められた“鍵盤の嵐”といえる作品であったが、本ボックスのように各ディスクに散らばって収録されると、彼こそがジェネシスのサウンド志向に関して決定権を持っていたメンバーだった事実が浮かび上がってくる。打ち込みによるレゲエ・リズムをバックにバンクスが歌いまくったソロ2作目『ザ・フュージティヴ』だって、例えばフィル・コリンズ(Phil Collins)が歌ったならばヒットしたかもしれない(失礼)と思わせるほどにポップだし、妙に同時代性を意識して大コケしたユニット『バンクステートメント(Bankstatement)』だって楽曲は粒揃いだったことが再認識できるものだ。4つの未発表曲や未CD化のサントラ『The Wicked Lady』のナンバーが収録されているだけでなく、一部の曲は新規リミックスが施されているので、ジェネシス・マニアは必聴・必携のボックス・セットである。[鬼形 智/SD190]

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