2017年8月23日

現ジャパニーズ・プログレ・シーンに突如現れた、話題の“MIZUKI da Fantasia”ロング・インタヴュー[パート1]掲載!

TOP_Mizuki
オンラインストア
アマゾン

MIZUKI da Fantasia Interview by STANGE DAYS(宮脇浩/池田聡子)

◎現在、プログレ・ファンの間で、ちょっとした話題になっているグループ、MIZUKI da Fantasia(ミズキ・ダ・ファンタジーア)。当初youtubeで公開された「サクラサク道」が、“本格的プログレッシヴ・ロック”という触れ込みとは裏腹に、爽やかな歌曲だったため、プログレ・ファンの間からは、疑問の声が上ったが、やがてサウンド・クラウドで公開された楽曲を聴いて驚かされたリスナーも多かったはずだ。さらにCDショップの店頭で受け取った4曲入りのフリー・ディスクを聴いたプログレ・ファンは2度目の衝撃を味わったはずだ。なぜならば、そこに収録されていたのは、豊穣なヴォーカルを中心とした重厚で繊細な稀に見る本格的なブリティッシュ・テイスト溢れるプログレッシヴ・ロック・サウンドだったからだ。一体、MIZUKI da Fantasiaってなんだ、という噂がプログレ・ファンの間で広がりを見せる中、ついに2017年7月26日にデビュー・アルバム『幻想の一夜〜In memory of fantasy』がリリースされた。アルバムは某有名ショップで一時品切れになるほどの勢いで売れ続け、発売後一週間にして、追加プレスがかかったという。プロデューサー、九尾一郎氏に、彗星の如く現れた謎多きバンド、MIZUKI da Fantasiaについて聞いた。

[パート1]

──MdF(MIZUKI da Fantasia)のアルバムがすごく売れていると聞きました。おめでとうございます。そもそもそのこのMdFの成り立ちは、どのようなものだったんですか?

Q.I「MIZUKIはTarmyという名で某音楽事務所に所属してR&Bを歌っていました。メジャー・デビュー寸前まで行ったんですが、なかなか上手くいかず、結果として彼女は事務所を離れることになりました。彼女の育成を担当していたのが、かつての僕の上司にあたる人だったんです。僕はちょうどその頃アニメやゲーム関係の人たちと仕事をしていたんですが、彼からMIZUKIを紹介してもらって話を聞いてみると、実はそういう音楽(アニメ/ゲーム)が好きだということがわかりました。ゲーム音楽やアニメの音楽を作っている人たちの中には、学生時代にプログレッシヴ・ロック・グループを結成していた人が多いので、彼らの作る音楽を聴くと、非常にプログレッシヴ・ロック的なアイデアやメロディが多く含まれています。MIZUKIがプログレッシヴ・ロックを聴いてあまり違和感を覚えなかったのは、そうした理由からだと思います。彼女はそれほどプログレッシヴ・ロックについて造詣が深いわけではありませんが、キング・クリムゾンの「21世紀の精神異常者」が好きだって言ってました。彼女は流行りの音楽、アニメ、ゲーム音楽には滅法強く、彼女から教えてもらうことも多いです。彼女は、僕が考えていたコンセプト、つまりインストゥルメンタルじゃない70年代型のプログレッシヴ・ロック──パワフルな女性ヴォーカルを主体とした、ドラマティックで、ロマンティックな音楽を打ち出すグループ、というコンセプトにピタリとハマったんです。けれども当時彼女は22歳だったし、50歳を過ぎた男の言うことに耳を傾けてくれるはずかない、と思ったんです。彼女からしたら僕は“おとうさん”ですから(笑)」

──でも、彼女は首を縦に振った。

Q.I「そうなんですよ。驚きました。で、一緒にやってみようということになり、知り合いのミュージシャンを集めてF.R.O.(Fantasy Rock Orchestra)という名前で活動し始めました。」

MIZUKI

MIZUKI

──F.R.O.はどのくらい活動したんですか?

Q.I.「実質1年くらいかな。いくつかのバンドを集めて架空のゲームのサウンドトラックのオムニバス・アルバムを作り、リリース直前まで行ったんですが、結果として、大人の事情でリリースできなかったんです。集まってもらったアーティストたちにはとても不愉快な思いをさせてしまいました。そうして、F.R.Oは失敗に終わり、僕たちは音楽活動ができなくなりました。世の中上手くいかないですね。彼女にとっては2度目の挫折ですね。それで、彼女とどうしようか、って話し合って、もう一度だけやろう。ということになりました。彼女は今回のプロジェクトがダメだったら生まれ故郷の沖縄に帰ると言いました。僕は僕で、その時いろんなことがあって、大病もして、その治療の副作用がひどくて、生きていることも嫌になって、本当にどこかで9時~5時の、音楽とは全く関係ない仕事をやろうかとまで思ったんです。でも彼女がもう一度やりたい、って言ってくれたので、僕もなんとかしなくっちゃ、と思いました。やるなら3度目の失敗はない。僕はそれまでいろんなアーティストの作品でプロデュースやディレクションをやっていましたが、彼らの作品に踏み込んだ仕事はしてなかった。でも、そこで得た知識も含め、今回ばかりは僕の持っている音楽の知識と技術を全部使って、たった一人の人でもいいから“これは、傑作だ!”って言ってもらえるようなアルバム作ろうと思いました。

──自信はあったんですか?

Q.I「う~ん、それはどうかな。ないと言えば嘘になるし、あると言ったって、さほどのものではないと思います。ただ、プログレッシヴ・ロックの長所と短所、いいところと、そうではないところ──特に日本のプログレッシヴ・ロックの弱点はわかっていましたから、そこを避けようと心がけました」

──弱点ですか? それはなんですか?

Q.I「それは、歌です。ヴォーカルです。さらにいえば、プログレッシヴ・ロックというのは、50年代、60年代のポップ/ロック音楽に対抗して、あるいは進化して出てきた音楽なので、それまでのシングル曲のテーマだった“ボーイ・ミーツ・ガール”というものがほとんどない。あるのは、宇宙、精神世界、大自然、寓話といったテーマを持ったフィクションの音楽なんです。つまり、ラヴ・ソングがない。あと、ファッション性かな(笑)。だから、ラヴ・ソングを主体とした、ロマンティックな楽曲を作ろうと思いました。ヴォーカルが女性だしプログレとラヴ・ソングを融合させた音楽演ってる人は少ないでしょう。どうせやるなら誰もやってないことをやった方がいいし、その方がアーティスティックでクリエイティヴだと思った」

──プログレにファッション性は必要ですか?

Q.I.「必要です。誰だって、カッコよくて、歌が上手くて、楽器が上手い人に憧れる。それはプログレに限ったわけではない。自分と同じような人には親近感は感じるけど、憧れは抱かないでしょう? だから、ヴォーカリストは男だったらロバート・プラントのようにカッコイイほうがいいし、女の人だったら綺麗なほうがいいでしょう。実際、若い頃のプログレのアーティストはみんなカッコよかった。ジョン・アンダーソン、グレッグ・レイク、ピーター・ゲイブリエル、イアン・マクドナルド、エディ・ジョブソン、ジョン・ウェットン、ソーニャ・クリスティーナ……。みんなインテリジェンスとワイルドさを兼ね備え、クリエイティヴィティに溢れていた。70年代には女の子のプログレ・ファンは多かったんです。彼らは見た目も中身も良いっていう人達だった。そういう人たちはそうそういないし、だからこそ僕たちは彼らに憧れたんです」

──MIZUKIにそれを感じた?

Q.I.「ちょっと違うかな(笑&悩)」

──ええっ! MIZUKIちゃん若いし、可愛いじゃないですか?

Q.I.「ま、そうね。おすましすると可愛いかも。でも、彼女はやっぱり歌唱力でしたね。そしてスター性を感じました。カリスマ性については疑問符がつきますが、いろんな意味でどこかキュートでしょう。あれほど歌の上手い女の子はそうそういません。ドリカムの吉田さんにはじまって、ミーシャ、スーパーフライ、AIとか、近年女性アーティストの歌唱力はグングン上がってるんですが、みんな根っこがR&Bというか、アメリカン・テイストです。残念ながらブリティッシュな感じの人がいないんですね。確かにMIZUKIはR&Bを歌っていましたが、ブリティッシュな感じがしました。ノーザン・ソウルの匂いを感じました。迫力あるんだけど、どこか儚げです。なんていうかな、キャピキャピしてるけど翳りがあるっていうか……。たとえば、ピンク・フロイドの『狂気』の中の「虚空のスキャット」を歌っている、クレア・トーリーかな。彼女は黒人なんだけど、アメリカ然としてません。そしてMIZUKIは今でいう、ツンデレ系の女の子かもしれませんね。ステージに立つとものすごく元気なんだけど、ちょっと機嫌が悪かったり眠かったりすると、メチャメチャ怖い。彼女曰く“塩対応”って言うんだけども、気に入らない人が近くにいると、バンバン攻める。それを僕に向かって言うもんだから、その人と彼女の間に入ってとても困りますね(笑)。ただあの歳でプログレッシヴ・ロック・グループのヴォーカルを演ろう、なんて女の子はとにかく珍しい、というか、皆無だったでしょう。その上抜群に歌が上手い。だから、音楽性さえはっきりしていれば、話題になるんじゃないかと思いました。それに彼女はとても真面目。どんなに車両が空いていても、優先席には絶対に座らない。僕に勧めてくれる。僕はそこまで老人じゃないって思うけど……(笑)。そんな面を見るたびに、彼女とだったら一緒にやっていけると思いました。僕のように社会性のないダメな大人は、彼女に怒られっ放しです」

CD:MIZUKI da Fantasia『幻想の一夜~In memory of fantasy』 ヌーヴェルヌ / SDTO-2017 / 2017年7月26日

CD:MIZUKI da Fantasia『幻想の一夜~In memory of fantasy』 ヌーヴェルヌ / SDTO-2017 / 2017年7月26日

──CDのライナーにも書いてありましたが、プロジェクトはとても大きな危険を孕んでいたと……。

Q.I.「そうです。この時代──ダンス音楽、ヒップホップ、レゲエ、テクノといった踊れる音楽の時代、または、ギターが中心となっているラウド・ロック・バンドが多い時代、あるいは傑作というものが出揃ってしまった時代に、ダンスの要素やラウドでメタルな要素が全くない70年型のブリティッシュ・プログレッシヴ・ロックを演るなんて狂気の沙汰としか思えない(笑)。若い世代に“プログレ? なにそれ”って言われかねないし、耳の肥えた4、50代からも、ちゃんとした音楽、つまり理にかなったもの(メロディ/ハーモニー/リズムの理合性があるもの)を作らないと、馬鹿にされてしまう。本当にそこはプレッシャーでした。彼らは若者と違ってプログレだけじゃなくて、ロックの傑作を嫌と言うほど聴いてきていますからね。彼らはちょっとしたことでは評価してくれません。加えて日本のプログレッシヴ・ロックはこれまでの傾向から敬遠される可能性がありますから。僕らの置かれている環境的は本当に難しい。さらにプログレは“調性”であり“無調”でもありますから、とらえどころのない面があります。ピンク・フロイドはアルバム『ウマグマ』でそれを試みましたが、結局その二つは交わることなく乖離したままだった。それに、AKB48とExileとジャニーズの帝国軍にMIZUKIと僕の反乱軍が立ち向かえるはずがないでしょう。でもそこには、とてもとても細いけど、原子核に通じる通路があるはずだと思いました。そこを通って爆弾を落とせば、グルーヴ感とヴァイブスとライムで膨れた、デス・スターを破壊できる、と思いました(笑)」

──ん? スターウォーズの話ですか(笑)

Q.I.「そうじゃないけど、似てると思わない?」

──もう少し具体的にどんなアルバムを作ろうと思いましたか?

Q.I.「僕らの世代(1955年~65年生まれ)、のプログレ・ファンはみんな同じだと思うけど、常にクリムゾン、フロイド、イエス、ジェネシス等の曲が頭の中に流れている。たまにVDGGやジェントル・ジャイアントの人もいるかな(笑)。僕の頭の中には、いつもクリムゾンの『レッド』、『リザード』、PFMの『幻の映像』、キャメルの『スノーグース』、M.オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』、ピンク・フイドの『炎』、そして、レッド・ツェッペリンの『I』や『フィジカル・グラフィティ』、ディープ・パープルの『イン・ロック』が浮かんでは消えています。実際はもっともっとありますが、そういうものが一つになる時がある。もっと言うと、ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のコーラスはキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」のコーラスと類似しています。かつてイアン・マクドナルドと会ったときにこの質問をしたら彼はニヤニヤして僕の手を握ってくれた。彼は肯定も否定もしなかったけど、やっぱり彼の頭の中では、『サージェント・ペパーズ~』と『クリムゾン・キングの宮殿』が、一つになった瞬間があったんだということを確信しました。つまり、そういうものが一つになったようなアルバム。似ているけどオリジナルなもの、70年代の名盤と同一延長線上、同一軌道上にありながら、交わらないような作品にしたかったんです。拡大再生産ではないんだけど、何かを受け継ぐという点においては、アップデイトという言葉があっているかもしれません。それから重要なのは時間ですね。CDの時代になってなんとなくアルバムが50分を越えてきてるような気がしますが、聴いて飽きないのは、全部で50分以内だと思うんです。なので、『幻想の一夜』は、全編で49分です。アナログ時代で言えば、A面24分、B面25分という感じですかね。曲はいっぱいあって、60分でも、70分でも平気だったんですが、あえて50分以下にしました。収録しなかった曲はショップの特典につけたので、聴いてください。70年代ロックで育ったアナログ世代は、アルバムは50分が限界ですね。それでもちょっと長いかもしれない(笑)。トータルで、まあまあのでき映えかな」
(パート2へ続く、お楽しみに!)


[『幻想の一夜~In memory of fantasy』主な取り扱い店]
・ディスクユニオン(新宿ブログレッシヴ・ロック館)
http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_progre
・ワールドディスク http://wdisque.shop-pro.jp
・ガーデンシェッド http://www.gardenshedcd.com
・タワー・レコード(新宿/渋谷店)
http://tower.jp/store/kanto/Shibuya
http://tower.jp/store/kanto/Shinjuku
・カケハシレコード https://kakereco.com

Official Facebook:
https://www.facebook.com/Mizuki-da-Fantasia-425003941193088/